11月23日(祝・月)福岡出張、宅老所よりあいのセミナーに参加してきました。“よりあい”は福岡市で下村恵美子さんが平成3年から取り組んでおられる宅老所です。三好春樹さんの考え方とも共感し合っているので、良くお二人(+α)で講演会やセミナーなどを開催しています。今回は三好さんの他に、詩人として有名な谷川俊太郎さんとご子息の賢作さんもお呼びしてのセミナー&コンサートという形で開催されました。まずは、三好さんの『老いの見方・感じ方』の講演でセミナーが始まりました。

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会場は西南大学のチャペルです。素敵なクリスマスデコレーションを前に講演する三好さん


 セミナーのテーマは“ただいのちであること”です。最近の下村さんは、看取りについて語ることに多くの時間を割かれます。本人との関わり、家族との関わり、医療との関わり、職員の関わり方などを、実際に看取った経験に基づいて、あるときは熱く、ある時は涙ながらに訴える姿は、同じ介護を職としている者にとって強い共感を呼ぶのです。特に今回は、『じいちゃん、ばあちゃんの死』~ある夫婦を支えて、という実践報告で、

  ・家族の立場から   井手 一世さん
  ・医師の立場から   二ノ坂保喜さん(にのさかクリニック院長)
  ・職員の立場から   下村恵美子さん(宅老所よりあい代表)

の話があり、その中でも家族の立場から話をされた井手さんの話は特に胸を打つものがありました。終末期に必ずといって良いほど現れる誤嚥や嚥下機能の低下、その時に胃瘻を造設するのか、しないのか。また、排痰の困難さや呼吸の浅さに気管切開するのか、しないのか。命を繋ぎ止めることに対する家族の悩みは思い余るものがあると思います。普段は決して表に出てこない、またテレビも取り上げない家族の慟哭に聴衆も涙を流しながら聞き入っていました。

 3人の報告の後は、谷川俊太郎さんと第2よりあい所長村瀬さんを交えてのトークセッションでした。最初にNHKなるほどなっとく介護で朗読された“ただいのちであること”の詩が谷川さんによって朗読されます。そして、3人の軽快なおしゃべりが続きました。写真を使いながらその人のエピソードを語りながら、よりあいの歴史や方向性を語っていかれました。谷川さんも相槌を打ちながら、また自らの老いを交えながら、詩人の感性で、現場の二人に負けない話を聞かせてくれました。

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左から、谷川俊太郎さん、下村恵美子さん、村瀬孝生さん、日本の介護を引っ張る豪華メンバー


 セッション終了後は、西南学院大学ハンドベル クワイヤさんのハンドベル演奏に続き、ご子息の賢作さんをお迎えして詩と音楽を楽しみました。(さすがにコンサートの最中は撮影禁止でした)1時間半の間素敵なピアノと軽妙なおしゃべりを楽しみアンコール、そして谷川俊太郎さんは即席のサイン会へと向かいました。100人以上、1時間を超す時間にもかかわらず、ひとりひとり丁寧にサインをしておられました。

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たくさんのファンに応じる谷川俊太郎さん、雲母書房が来店して本を即売していました。


 よりあいの実践は素晴らしいです。ゲストに対して、家族に対して、そして職員に対して思い描いている介護の姿は私たちと変わりません。そこに安心感があり、また実現不可能なことではないことを私たちに教えてくれるありがたさを感じずにはいられません。下村さん、とっても苦しいことだとは思いますけれど、私たちの思いを先頭を切って走ってください。私たちは下村さんの背中を見て安心して走っていくことができるのですから。

 12月3日の内定者研修の講師は、下村さんにお願いしています。今回の話を基本にして話していただくようにお願いしてきました。参加される内定者のみなさん、職員のみなさん、ノートとハンカチを忘れないでください。